今回は、前回の続きで、、、、
「脳トレ」について、少しご紹介したいと思います。
さて、「脳トレ」という言葉を皆さん聞いたことがあるのではないでしょうか。
計算をしたり、音読をしたり、、、
学習のようなことをして、頭を使う、、、、、
それが、認知機能低下の予防につながる、、、、
ということで、高齢者の方向けに、色々な脳トレが紹介されています。
前回の話とつながってくるのですが、、、、
若いころの学習、老後の重篤な認知機能低下予防につながる、、、、
これは前回、ご紹介したのですが、やはり、認知機能低下予防と学習には関係があるようです。
そうなってくると、勉強等することで、認知機能低下予防をはかろう、、、という発想は自然なことだと思います。
計算・音読で使う脳の部分は、実は作業記憶と関連のあるところだそうで、、、
そのため、計算・音読トレーニングをすることで、作業記憶トレーニングと類似した効果が得られる可能性がある、、、
実際に、健康な高齢者の方を対象に6カ月、毎日15分音読と計算トレーニングをしたグループと、しなかったグループと比べると実行機能、処理速度などが向上していたそうです。
また、上記は認知症の高齢者を対象にしたときにも、同様の結果が得られたそうです。
ということで、以前東北大学在籍の川島教授が中心になり開発をした「学習療法」というのは、上記の計算・音読トレーニングなのですが、、、、
この川島教授が、ニンテンドーDSで、以前「脳を鍛える大人のトレーニング」というゲームの監修をされていたのですが、ご存じの方はいるでしょうか?
2005年の発売以降、大人気となり、非常に売れたため、海外でも販売、、、、
いまではニンテンドーswitchでも続編のタイトルが販売されているのですが、、、
実際のところ、、、、こういった「脳トレ」ゲームは認知機能トレーニングに効果があるのでしょうか??
、、、ちょっと、「?」ですよね。
調べてみたところ、ゲームを用いた研究というのは昔から色々とあるようで、、、、
たとえば、テトリスを一週間に 5 時間プレイすることを 5 週間続けた群は,スタンバーグの反応時間検査とストループテストの成績がゲームをしない群よりも向上することが報告されていたり(Goldstein ら1997)、、、、、
パックマンやドンキーコングを 7 週間プレイすると反応時間が向上することが報告されている(Clark ら 1987)そうです。
つまり、認知トレーニングを意図していないゲームであっても、脳機能の一部には効果がある、ということのようですが、、、
じゃあ、脳トレゲームだったらどうなのか?
実は、2010 年には,Nature 誌に,脳トレは効果がないとする論文が掲載された(Owen ら 2010)そうで、実際に、雑誌やテレビなどで、「脳トレは効果がない」といった情報が流れたことがあります。
これに対し、川島教授は
「この研究では,約 1 万人の参加者をインターネットを用いたオンラインの推論ゲーム群と記憶ゲーム群とクイズゲーム群(コントロール群)の 3 群に分けた。この研究では,独自に作成した推論ゲーム群と記憶ゲーム群を脳トレゲームと想定している。そして,6 週間の介入期間の前後でいくつかの心理検査を行った。推論ゲーム群と記憶ゲーム群とコントロール群の成績を比べたところ,3 群の間に統計的な有意な差は認められなかった。つまり,脳トレゲーム(推論ゲームと記憶ゲーム)を行っても効果がないということを示した。この論文は,大規模な疫学調査であり,権威のある雑誌に掲載されたために,「脳トレは効果なし」という見出しで多くのメディアに取り上げられた。しかしながら,この研究は,この論文で使用した脳トレゲームの効果がないことを示しただけに過ぎず,広く社会に受け入れられた DS 脳トレの効果は検証していない」、、、
とのことで、あらたに、健康な高齢者をテトリスをするグループと、DS大人の脳トレーニングをする2グループに分け、4週間プレイすることでどういった変化があるかを調べました。
その結果、テトリスをした健康な高齢者グループよりも、DS大人の脳トレをした健康な高齢者グループの方が、実行機能と処理速度を向上させる効果があることを明らかにしました。
つまり、DS大人の脳トレには認知機能向上のために効果あり、、、といった所なのですが、、、、
ただ、同時に、川島教授も「検討課題は,DS 脳トレは,日常生活に関連する行動を改善することができるのかという点である。例えば,DS 脳トレをすることにより,車を運転中のエラーが減るなどの効果があるのかどうかを調べることは,重要な検討課題の一つである。」とも結んでいます。
そのうち、2018年イギリスの医学誌で、「パズルを解いても個人の知能低下は防げない」ことが示唆される論文が発表されたり、、、、
かと思えば2019年に、今度は学術誌「International Journal of Geriatric Psychiatry」にて、「脳トレは知力低下の予防に効果がある」という調査結果が発表されたり、、、(エクセター大学 アン・コーベット博士 :パズルを定期的にやっている人は、やっていない人に比べて短期記憶が8歳、文法的推論能力については10歳若かった)
さらにさらに、2021.4には、カナダ・ウェスタン大学の研究チームが脳を鍛えるオンラインゲームが、記憶、推理、言語能力などをどれほど向上させているかを調査。
結果は、各種能力は、脳トレゲームをしない人とまったく変わらないことが判明、、、、、
1009人が平均8ヶ月間(最低で2週間、最高で5年以上)脳トレゲームを続けており、その他の約7500人は脳トレを一切していない、という2グループに対し、記憶力、推論力、言語能力などを評価する12の認知機能テストを実施しました。
その結果、すべての認知機能において、脳トレをしているグループが、していないグループに対し優位に立つことはありませんでした。
もしかしたら、部分的には認知機能が向上する可能性はあるのかもしれませんが、、、、
川島教授も指摘しているように、車の運転など、生活に役立つような認知機能の向上が期待できるのかどうか?という面に着目することは大切だと思うのですが、、、、
現時点では、認知機能向上について、効果あり、効果なし、、、どちらも示唆されているような状況であり、、、、
実践的な部分での認知機能向上については、効果が期待できる、といいきるのは、、、、
なんとも、難しい印象を持ってしまいます、、、
実際に、脳トレによる脳機能低下予防は、まだ研究段階とのことで、、、、、
世界中の様々な機関で研究中であり、、、、、
その結果がまたれるところです。
上記をみてみますと、、、、
脳トレについては、、、、、
無理にこのゲームを!、、、、とか、、、
無理にこの計算問題を!、、、、というよりも、、、、
「本人が楽しい!と思える活動を、楽しみながら続ける」ということが、いわゆる「脳トレ」になるのではないかと思います。
エビデンスはないかもしれませんが、、、、、
やはり、知的な活動などは、本人にとっての脳機能にプラスの効果が期待できるのでは、と思われることと、、(何もせず、ずっと寝ているより、楽しみながら行う活動の方が認知機能にとってよいと思うのですが、、どうでしょう?)
楽しみながら行う活動は、それそのものがストレス解消や、個人のQOL向上に寄与すること、、、、
運動・活動など、体を動かすことそのものが、リハビリの効果が見込めること、、、
など、色々と理由が挙げられますので、、、、
個人的には、こちらに注力して、人生を楽しく過ごす、ということの方がよいように思います。
それが脳トレであるのか、楽器の演奏であるのか、パソコンか、手芸か、ガーデニングか、、、、
色々あるかと思いますが、、、
楽しくないものは続かないわけですから、、、、
個人的には、こういったものを継続的に、楽しみながら長く続けることが実践的な脳トレなのではないかと思います。